第146回 ASTE 例会
講演:「教育実習の決め手・勘どころ」
講師:菅正隆(国立教育政策研究所・文部科学省)
日時:2007年4月14日(土)15:15〜16:45
場所:上智大学3号館227教室
ASTE(上智大学英語教員研究会)に参加してきました。今回は、学生の教育実習事前授業と兼ねていたので、教育実習へ行く前に確認しておくべき課題や、授業で役立つアクティビティの紹介といった内容でした。
【英語教育の現状と課題】
英語教育関連資料として、まず、平成17年4月22日、国立教育政策研究所発表の「平成15年度教育課程実施状況調査(中学生)」と、平成19年3月3日、文部科学省初等中等教育局国際教育課程発表の「平成18年度英語教育改善実施状況状況調査」を見ていきました。
前者の調査のうち取り上げられていた項目は4つで、それぞれ「英語の勉強は好きだ。」「英語の勉強は大切だ。」「英語の授業がどの程度分かりますか。」「授業がどの程度分かりますか。」です。
「英語の勉強は好きだ。」の項目では、回答を「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」「分からない」から選択しています。結果、学年が上がるに従って、英語の勉強が好きだという「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の回答率が低下し、逆に英語が好きでないという「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の回答率が上昇しています。特に第1学年と第2学年での差が大きく、2年生になって英語が嫌いになるというパターンが多いのではないかと考えられます。
「英語の勉強は大切だ。」の項目でも同様に、回答を「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」「分からない」から選択しています。第1学年と第2学年を比較すると、英語の勉強が大切だという「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の回答率が低下し、逆に大切だとは考えない「どちらかと思えばそう思わない」「そう思わない」の回答率が上昇しており、これは「英語の勉強が好き」という項目と同じ傾向です。ところが第2学年と第3学年を比較すると、第1学年での回答の割合までは及びませんが、英語の勉強が大切だとする回答が増え、大切でないとする回答が減っています。これは恐らく、英語の勉強は好きではないが、受験勉強で英語が必要となったという状況による結果ではないかと考えられます。
「英語の授業がどの程度分かりますか。」の項目では、回答を「よく分かる」「だいたい分かる」「分かることと分からないことが半分くらいずつある」「分からないことが多い」「ほとんど分からない」から選択しています。英語の授業がわかるという「よく分かる」「だいたい分かる」の回答率は学年が上がるに従って低下していき、逆に「分かることと分からないことが半分ずつある」「分からないことが多い」「ほとんど分からない」の回答率が上昇しています。ここでも割合の変化を見ると、第1学年と第2学年の差が大きく、やはり2年生になると英語の授業が分からなくなるといった傾向が見られます。
「授業がどの程度分かりますか。」の項目では、各教科(国語、社会、数学、理科、英語)ごとに「よく分かる」「だいたい分かる」「分かることと分からないことが半分くらいずつある」「分からないことが多い」「ほとんど分からない」から選択しています。今回は教科ごとの「分からないことが多い」と「ほとんど分からない」の割合を足したものが提示されていました。第1学年と第2学年を比較すると、全科目共通して、第2学年の方が分からない割合が高くなっています。しかし、その割合の上昇率は英語が一番です。さらに、第2学年と第3学年を比較すると、第3学年で、英語以外の4科目では分からない割合が低くなっている一方で、英語に関してはさらに高くなっています。英語は他の4教科に比べて理解しづらく、さらに他の教科に比べて受験勉強の成果が出にくいという傾向が見られます。
後者の調査からは「英語の授業における英語の使用状況」について取り上げ、中学校においては各学年ごとに、高等学校においては各科目ごとに4つの選択肢「英語の使用はほとんどあるいは全くない」「英語を用いることはあるが半分またはそれ以下である」「半分以上は英語を用いて行っている」「大半は英語を用いて行っている」から回答しています。
中学校での各学年ごとの回答を見ていくと、各学年においても最も回答率が高いのは「英語を用いることはあるが半分またはそれ以下である」という回答で、学年が上がるのに伴い上昇しています。次に回答率が高いのが「半分以上は歯英語を用いて行っている」で、学年が上がるのに伴いその割合は低下しています。つまり、学年が上がるにつれて授業における英語の使用率は下がるのではないかと考えられます。
高校での各科目ごとの回答を見ていくと、やはり英語を積極的に使うと予想される OCTと OCUで「半分以上は英語を用いて行ってる」「半分は英語を用いて行っている」の回答率が高く、それ以外の英語T 、英語U 、リーディング、ライティングでは「英語を用いることはあるが半分またはそれ以下である」の回答率が著しく高く、「英語の使用はほとんどあるいは全くない」の回答率と合わせると約9割にまでなっています。OC の授業で比較的英語を使用する傾向にはあるが、英語の科目4つを全体的に考えると授業における英語の使用率が低い傾向にあることが分かります。
最後の資料として、高等学校(英語T)教科書難易度別採択数を平成17, 18, 19年度使用分で見ていきました。教科書はそれぞれ、難・中・易の3つの難易度に分けられています。すると年々教科書全体の総数が減っており、難と易の教科書がそれぞれ減少しています。中の教科書も平成17年度と18年度を比較すると18年度に減少しているのですが、19年度には増加し、これは17年度よりも増えています。割合で考えていくと、採択する教科書の難易度がだんだんと低くなっているのではないかと考えられます。
調査結果全体を通して考えられることは、生徒は中学2年生で英語が分からなくなり、その英語力は年々低下しているということだと思われます。
【教育実習以前の課題】
教育実習へ行く際に気をつけることが4つ挙げられました。「挨拶」「身だしなみ」「時間厳守」「他教員との関係」です。「他教員との関係」というのは、学校の考え方を理解し、そこに実習生独自の色を付けていく形で関わっていくということだそうです。これら4つのポイントは、教育実習に行くからというよりは、社会に生きる大人としての常識はしっかりと身に付けておかなければならないという当然のことだと感じました。
【授業以前の課題】
実際に授業に入る前の課題として、大きく4つ挙げられました。「目標を持つ」「必携アイテム」「声の大きさ」「目線」です。特に「目標を持つ」ということに関しては、2〜3週間のスパン、1日1日で、それぞれ目標を立てることが大切とのことでした。
【授業の課題】
実際の授業での課題となる点は、どれも重要ものばかりでした。「生徒名の記憶」「立ち位置」「黒板使用術」「ティーチャー・トーク」「褒め上手は授業上手」「学習指導案作成のポイント」「内容(音読、タスク、内容把握等)」とかなり実践的なもの、かつ、指摘されなければなかなか気が付かないものです。
「生徒名の記憶」は、生徒と教師の関わり合いの中で大切なことです。自分の名前を知っているということで、生徒は先生が自分のことをちゃんと見てくれていると感じます。これは生徒の学習意欲へとつながる大切な要素だと思います。
「立ち位置」では、生徒に余計なプレッシャーを与えないよう気をつけることが大切です。具体的に言うと、机間指導で上から見るといった行動は避けるということなどです。個人的に指導する際には目線を同じ高さにして、生徒を安心させることが大切です。また、生徒から意見や質問、発表などの発言があった場合には、その生徒のすぐそばで応対するのではなく、その生徒からなるべく離れて応答する方が、クラス全体に伝わります。
「黒板使用術」は、別に特別なことをするというわけではありません。単に、生徒が見やすい板書を行うということです。文字の大きさ、色、まとめ方などです。事前に研究しておかなければ、その場になって初めてではなかなか上手く行かないとのことです。
「褒め上手は授業上手」というのは、生徒の学習意欲を高めるという点においてとても重要です。きっと勇気がいったであろう生徒の発言に対し、先生はその発言や努力、またはその発言をする様子を褒め、生徒のさらなる積極性を促すべきということです。間違えても構わない、むしろ間違えた方がみんなの勉強になる、そういったことを生徒に知ってもらうことで、英語に対して変な壁を作らないようにすることが大切です。そうすることが、活発的な授業へとつながり、積極的な言語活動が行われるようになると考えられます。
「内容」については、このあとアクティビティ例として具体的に紹介していきます。
いずれにしても、鍵となる考え方は「生徒の立場になって考える」ということです。
【アクティビティ例】 ※当日実際にパートナーと行いました
☆教科書の音読
パートナーとお互いに教科書の本文を読み合います。相互に評価し合うことによって、切磋琢磨していくことができます。
☆あいさつデモンストレーション
ダイアログは、一般的で簡単なものです。
A: Nice to meet you. I'm ____.
B: Nice to meet you, too. My name is ____.
A: Where are you from?
B: I'm from ____, Japan. How about you?
A: ____, Japan.
B: Oh, I see.
しかし、ただお互いに言い合うだけではありません。そこには、3つの条件があり、これを守らなければならないのです。1つ目は、握手をするということ、2つ目は、アイコンタクトをとるということ、そして3つ目は、2人の会話を5秒で終わらせるということです。実際にやってみると、5秒では到底終わりません。なので繰り返し挑戦していきます。1度目よりも2度目、2度目よりも3度目と、やっていくうちにだんだん時間に間に合うようになっていき、4度目くらいで多くのグループがクリアします。やればやるだけ上手くなる、という自信をつけることのできるアクティビティです。
実はこのアクティビティには裏があり、実はカウントをしている先生は、回数を重ねるごとに少しずつ時間を増やしていたのです。しかし、やっている側はほとんどそれに気がつきません。心理を上手く利用していると感じました。
☆発音クイズ
ミニマルペアの単語を使った発音クイズです。提示された2つの単語のうち、どちらが発音されたかを聞き取ってマークします。
(1) zen, then (2) closing, clothing (3) breeze, breathe (4) tease, teethe
最初はペアワークでお互いに出題者、解答者となり、全問終わったところで答えの確認をしていきます。そして今度は生徒のうちの一人に出題者になってもらい、他の生徒全員が解答者となって、最後に答え合わせをします。この際に気をつけることが出題者を褒めること。常に生徒のやる気を引き出すことを忘れてはいけません。
☆歌詞のディクテーション
今回は、DREAMS COME TRUE の "LOVE LOVE LOVE -English Version-" で行いました。全部で10カ所の空欄があります。空欄を作る際のポイントとしては、必ず一番最後の歌詞の中にも作るということです。そうしなければ、穴が埋まった安心感から、生徒がリスニングに集中しなくなることが予測されるからです。
さらに上級レペルの問題を作るとしたら、穴埋めでないところに1つ、実際には歌われていない単語を入れておくということです。そうすると、間違い探しのために、生徒はさらに集中してリスニングを行うことになります。
【質疑応答】
学生の中から次のような質問がありました。
立ち位置の話で、生徒から意見や質問などの発言があった際には、教師はなるべく生徒から離れてクラス全体に聞こえるように応答すべき、とありましたが、生徒が間違えてしまった場合みんなに知られて恥ずかしいと思ってしまうように考えるのですが。
これに対し、管先生は、次のようにおっしゃいました。
「間違えたら恥ずかしい」という考え方を生徒の中から取り除いてやることが教師の重要な勤めです。クラス全体に聞こえる場でのやりとりこそ、むしろ「間違いは決して悪いことではなく、逆にいいことだ」ということを提示する絶好の機会と考えます。
私も質問をした学生と同じように感じていたのですが、説明を受けて納得しました。
今回の講演を通じて、私が学校という場で教育を受けてきた中で、「当たり前」とされてきたことの恐ろしさと、それが学習にもたらしてきた弊害、そしてそれらは、教師が知るべき事実であり、さらに取り除くための努力をしていかなければならない、ということを知ることができました。これは、講演の冒頭で管先生がおっしゃっていたことなのですが、
EIGO(英語)から、I(愛)を取ると、EGO(エゴ)になってしまう。
まさにこれだと感じました。すべては生徒に対する愛だと思います。それがない教師は、ただ自分のエゴで生徒に授業を押し付けているだけではないでしょうか。
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